さよなら、ワンダーエッグ

2000年12月31日、午後9時。
ファイナルイベントを迎えたエルズ広場には、
今までにないほど人が溢れかえっていました。

みんなの心には、いろいろな想いが交錯していたのでしょう。
言葉を交わす人はほとんどおらず、静かな空気だけが流れていました。

澄んだ音色が響いていました。
曲は、エルズ広場の「昼のテーマ」。
ワンダーエッグで遊んでいた私達にとって、一番なじみが深い曲で、
そのオルゴールバージョンが流れていたのでした。

そんな中、代表のドリーマー達がひとりずつ
アトラクターに先導されながら、大階段にキャンドルを並べていきました。
その様子をじっと見守る、たくさんのドリーマーたち。

エルズ広場横にはスクリーンが設置されていて、
今までワンダーエッグで行われてきた、いろんなイベントの様子が
スライドのように映されていきました。

心の中に、ここで作ったたくさんの思い出が蘇ります。
まるでつい最近の出来事であるかのように。

しかし突然、その静寂を破り、断続的な警報音が聞こえてきました。
そして、機械的な女性の声でアナウンスが。

「ただいまを持ちまして、たまご帝国エリアの全てのアトラクションへの
ワンダーエネルギーの供給を停止します」

一瞬ののち、エネルギーが落とされる音が聞こえてきました。
そして、たまご帝国から
静かに、すべての光が消えたのでした…。

動揺するドリーマー。
目に涙を浮かべるドリーマー。

やがて、再び静寂が戻り、セレモニーは再開されたのだけれど、
その後も何度か警報音とアナウンスが流れ、
ラペロの市場も、時の工場も、
次々にエネルギー供給が停止され、光が消えていきました。
最後に竜の城エリアのエネルギー供給が停止され、
エルズ広場は暗闇に包まれたのです。

まさか、ワンダーエネルギー供給停止の瞬間に
立ち会うことになるなんて…。
数時間前までは全く実感が沸かなかったのに。
すべての動力が落ち、光が失われた暗いエルズ広場に立って、
私の頬にはこの時、ワンダーエッグで初めての涙が流れました。
居合わせた多くの人たちも、かなりの人が泣いていました。

数々の眩しい光と、楽しげな音楽が流れる中、
アトラクターやドリーマーの笑い声を聞くことは、もう二度とないんだ…。
そう思うと、どうしても涙が止まりませんでした。

そして、ワンダーエッグ=ラペロ村は
全ての活動を停止したのですが、
みんな、誰も帰ろうとはしませんでした。
出てしまえばもう二度と、この大好きな場所には
足を踏み入れることができないから。
ずっとずっと、エルズ広場で夢を見続けていたかったのでしょう。

アゴン、アレア、ミミクリ、イリンクスと一緒に写真を撮るドリーマー達。
そして、最後の輪踊りを始めるドリーマー達。
輪を縮めた時の「こんばんは〜!」
みんな、いっぱいの想いをこめて、ありったけの声で叫んでたよね…。

いよいよ訪れてしまった、お別れの瞬間。
アトラクター達が作ってくれたアーチの中、
最後のお礼と挨拶をしながら、笑顔を交わし合いつつ、
エントランスへと向かいました。
もう二度と逆にくぐることはないゲートを通って…。

さよなら、ワンダーエッグ。
今までたくさんの思い出をプレゼントしてくれて、
たくさんのことを教えてくれて、
そしてたくさんの仲間と出会わせてくれて、本当にありがとう。

楽しげに踊る、色とりどりの光。
馴染みの深いたくさんの楽しい音楽。
メビウスクリークの水の音。
冷え切った体を優しく包んでくれた、サイバーステーションのあたたかい空気。
アトラクター達が教えてくれた、「遊び心」の素晴らしさ。

みんなみんな、心の中に大切にしまっておきます。

 

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